石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

ものづくりIoTと4M管(11) 4Mデータ管理の難しさ

今回は4Mデータ管理の難しさとその対応策について5つの観点で纏めます。

(1)抜け漏れなないこと

 4Mデータ管理の難しさは、まず抜け漏れなく項目を書き出すこと、です。ただ作業指示書などには使用する部品、作業手順、使用する機械などを記載しているはずです。また作業してよい人などの制約があれば、それは別途管理しているはずです。調べる範囲が広範になりますが、これは地道にやる以外ありません。

(2)変更点のメンテナンス

 変更がかかったタイミングで正しくデータをメンテナンスすることです。従来変更がかかったことを通知する書類を作成する作業の代替えとしてデータベースに入力することメンテナンス漏れを防ぐことができます。

ものづくりIoTと4M管理(9)マスターデータの データベース化のメリット - 石川誠二の診断士日記

で述べたデータ入力のワークフロー化を行うことで、このデータのメンテナンスの確実化とデータの抜け漏れ防止が図れます。このワークフロー化の際には、必然的に起点(変更を入力する人)を設定しなければなりません。この起点が実務と異なる設定、例えば社内ルールでは設計担当が入力することになっているのに、購買担当が入力するような形、だったりすると運用に乗りません。

(3)社内用語の統一

 少し細かいことですが、社内用語の統一、という問題もあります。前回に書いた現場では1番のネジ、購入時は型式番号、という類です。多くは現場と設計の間で不統一があったり、担当する製品が違うと呼び方が違うことがあります。私は、以前、アルミを使用する工程が「Al工程」と記載されているのでそれに関するデータを得ようとして、データベースを検索しましたが一向に出て来ず、データベースには「AL工程」と登録されていた、という経験をして随分とストレスをためたことがあります。こうした用語の不統一は使い勝手を著しく落とすばかりか、ユーザに不信感を持たれるよう要因になります。AlとALくらいならば、あいまい検索の機能を入れて、と思うかもしれませんが、そういう機能を入れ込んでいくたびにシステムは大きくなり、導入・開発費は膨らみます。日常業務で用語の統一をしておくに越したことはありません。

(4)モニターデータは扱える範囲で

 またIoTが話題になって、設備から様々なデータが取れるようになると、逆にデータがありすぎて困るようなときもあります。社内で解釈できず設備メーカーに問い合わせなければわからにようなデータを設備から引き出して生産ラインのPCで常時見ていても無駄でしょう。例えば生産機械の異常診断にIoTを活用しようという動きもあります。自社でこの項目を見ていれば異常診断ができる、という知見があれば異常診断システムを導入すればよいですが、この機械は何十種類とデータが引き出せるらしいけど、随分と難しいアルゴリズム処理だかAIぽいことをしないと診断できないらしい、という場合、よほど切羽詰まった事情があるかデータ解析専任の担当者がいる場合を除いて、導入は見送った方が良いでしょう。自社で扱えるモニター項目に絞るべきです。

(5)異常値の扱い

 検査装置や機械のモニター値など、時々変な値を出すことがあります。変な」というのは不良品としてもあり得ない」といった意味です。これは生産現場のデータを見たことのある方には、実感としてわかっていただけると思いますが、例えばIoTシステムを構築するSEの方などは最初驚かれるようです。

 検査装置でこうした異常な値が出たときは、即座に不良とはせず、再検査にかけることも多いものです。この際、1回目のデータを残す/残さない、また異常なデータの記述の仕方(データの値をそのまま残す、NAなどの表記をするなど)といったことに関してルールを設けておいた方がデータ活用時に間違いが起こるリスクを低減できます。

 ちなみに検査工程で「変な」データが出て再測定する場合、1回目のデータを残さない方が製品の検査結果のデータとしては扱いやすくなります。しかし、あまりにも「変な」値が出る頻度が高い場合、検査装置自体や作業方法に問題があるのかもしれません。そういう場合、1回目の「変な」データを残していたほうが、検査装置の状態に関しては解析しやすくなるでしょう。

 また再測定があることを知らない方(他部署あるは社外のコンサル等)がデータを処理すると、とんでもない結果になりかねません。「再測定があることも知らないのか」、とその工程の担当者は思うかもしれませんが、普通、知りません。最初にこの工程ではこういうルールで検査データを扱っている」と説明できるよう、ルール化しておくべきです。

 次回は以上説明したことを踏まえ、特に中小のものづくり企業でIoTを導入しようする際の手順を説明いたします。