石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

ものづくりIoTと4M管理(6) 4Mのマスターデータとモニターデータ

さて、4Mでは具体的にどんなデータを管理するのか詳しく見ていきたいと思います。ここまで4Mは「決まり事」と「実績」からなる、と書いてきました。そして計算機の中でそれらを処理して役に立たせる際、すこし工夫しておくと便利になります。

 たとえば昨日工程Aで作業したのは鈴木さん、今日工程Aで作業したのは山田さんといった「実績」があったとき、顧客の監査で

「鈴木さんはこの工程で作業できるだけの経験積んでますか?

などと質問があったとき、教育記録の台帳を見せて、

ハイ、いついつ研修を受けています、山田さんもこの通りです」

と見せることが出来れば、スムーズに監査が進みますよね。

このように、作業者ならばその人の氏名、社員番号から始まって研修履歴など主な人事情報をひとまとめにしておけば、便利です。氏名などは結婚などで名字を変えるときぐらいしか変更はないでしょうし、研修履歴も日々更新されるものではないですね。

 このように更新頻度が低い情報を纏めてマスターデータとして計算機上で管理しておくとよいでしょう。ちなみにこうしたマスターデータは往々にして手入力になります。

 作業者に関する情報だけでなく、材料、機械、方法すべて同じです。例えば、機械に関しては、この部品はこの機械Aで加工する」という「決まり事」があったとき、機械Aの型式、仕様・能力、購入年月日、購入金額、設備メーカとその連絡先、メンテナンス項目などが纏めて管理されていれば便利です。実際、多くの工場では設備管理台帳のような形で実施されているのではないでしょうか。

 以下の表に4Mごとのマスターデータの例を示します。一例ですので必要に応じ、取捨選択したり追加して頂ければ結構です。

M要素

マスタデータ

Man(人)

氏名、社員番号、担当できる作業、教育履歴 等

Machine(機械)

名称、設備メーカ、購入価格、購入日、仕様・能力、設置場所、メンテナンス項目 等

Material(材料)

名称、部品メーカ、部品コード、使用製品、使用工程、購入価格、仕様・組成 等 

Method(方法)

工程フローと個々の工程名称、工程ごとの作業内容と手順及び設備の使用方法 工程ごとの使用部品 等

 社内で機械にセンサーを取り付けたり、機械から直接稼働データを収集する場合、機械ごとにネットワークのアドレスも一緒に管理しておくとよいでしょう。

 Materialのところで、部品ごとに使用する工程を管理して、Methodのところで工程ごとに使用する部品を管理する形になっています。これはデータとしては同じものですが、紙で記載した部品管理台帳や工程管理台帳では別々の書式で管理することになります。当然、作成の手間は2重になります。

 しかしPC上のデータベース上で管理していれば、一度入力すれば後は部品をキーに検索して使用する工程を出力するか、工程をキーに検索して使用する部品を検索するか、の違いだけです。これがIT化のメリットの一つでしょう。

 ただ現実問題としては、紙の台帳は残ったままでそれを見ながらPCにデータ入力といったケースもあるようです。PCに入力したデータを活用する人が何十人といる場合は、そうした「データ入力係」を置く意味もあるのでしょうが、多くの中小企業ではそんなに活用する人は多くありませんし、そうした人を置く余裕もないでしょう。これはIT化を進める上で良く問題になる点です。あとのの記事で触れていきたいと思います。

 次回はこのマスターデータに紐づいて記録する「実績」、いわばモニターデータについて説明していきます。