石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

ものづくりIoTと4M管理(10) マスターデータ管理の重要性

今回はものづくりにIoTを導入する際に4Mに関わるマスターデータの管理が重要な理由を説明していきたいと思います。

 ひとつ簡単な事例で説明してみましょう。

 部品箱にあるネジをカウントするセンサーをもうけ、残りが一定数以下になったら部品倉庫に必要なネジの型式を知らせて、それを補充する仕組みを構築するときのことを考えましょう。

 作っている品種が1種類で、ネジも1種類ならばそう間違いがおこることもないでしょう。そもそもセンサーを設けてわざわざIoTを活用したシステムを作るも必要なさそうですね。しかし、作っている品種が100を越え、それぞれ使用するネジが違ったり、品種によっては違う種類のものが複数使われていたら、ネジは管理はだいぶ大変になりそうですね。実際、ネジは太さや長さが同じでも材質やネジの頭(締める溝のあるところ)の形状が違うなど千差万別です。従ってそれぞれに型式の番号がついていて、購入時にはそれを指定して間違いがないようにします。しかしこの番号は10桁くらいの英数字からなりますから、現場ではそんな長い番号は使えません。使う順番などから1番のネジ、2番のネジなど簡単な名前で呼ぶことになります。するとこのセンサーでカウントしているのは1番のネジでそれは型式番号何々、こっちのセンサーでは2番のネジをカウントしていてそれは型式何々、と必ずセンサーごとのカウントしているネジの型式を対応付けなければなりません。

 さらにネジの型式が購買や設計の都合で変更になったら、その場でこうした対応付けも変更されなければなりません。

 しかし、IoTを用いた場合、「1番のネジが減った」状態をセンサーで検知し、部品庫に型式XXのネジを補給する指示を通知するには、センサーとネジの対応付け及びその製品に使うネジのリストが正確に更新されていなければならないことは理解いただけるでしょう。

これは

ものづくりIoTと4M管理(8) 4Mのマスターデータとモニターデータ - 石川誠二の診断士日記

で示した図のマスターデータのところに示した照合・確認のところです。センサーで得られたデータが何を意味(ここではネジXXが足りないということ)するか確認し、現実世界(部品倉庫)に指示を出す場合、その製品に使用する部品のリストは常に正しく更新されていなければなりません、またセンサーとネジの型式の対応付けも更新されていなければならない、ということです。

 この部品リストの管理はIoTがブームになる前からその重要性と難しさは議論されていました。そしてその解答として部品構成表(BOM:Bill of Matelials)という纏め方が使われています。BOMに関しては後ほど説明する機会があると思います。使用する部品に変更があった場合に部品構成表を書き直さねばなりませんが、紙で部品構成表を管理している場合は書き直すのは結構な手間です。それを個々の部品番号はデータベースに入れて、出力形態として部品構成表のフォーマットになるようにすれば部品構成表の変更の手間は省けます。このように部品の番号、名称とそれを使用する製品の情報をIT化(データベース化)して管理することで、部品構成表を作成する手間は随分と楽になりました。しかし、変更した「部品番号」自体は、正しく入力されねばなりません。

 IoTでなんでもかんでも便利になるわけではありません。部品構成表がしっかり管理できていない職場で、この例のようなシステムを導入してもうまく動きません。逆の言い方をすれば現状の管理レベルに合わせたIoTしか導入できません。

 また人はあいまいな言い方、記載の仕方でもなんとなく推測して結果として正しい作業をしてくれるものです。しかし、計算機はそうもいきません。例えば全角/半角文字の違いだって、その処理方法を指示しなければ望むような処理はしたくれません。そういう意味でIoT化を進めるには、また一段高いマスターデータの管理が必要になります。そうしたIoTを見据えた4M管理の難しさに関して次回は説明します。