ものづくりIoTと4M管理(7) 4Mのマスターデータとモニターデータ
今回は、実績に関するデータ、いわばモニタして得られるデータに関して説明します。モニタというとカメラによって撮影した動画とかセンサーによって得られた温度とか振動などのデータを連想しがちですが、ここではもう少し広い意味で使います。
例えば作業者の出勤状況もモニターデータとします。タイムカードなり出勤簿なり会社によって管理の方法は違うでしょうが、「今日現在の作業者の出勤状況」をモニターしている、と考えていただければ良いでしょう。
つまり。時間とともに変わる状況を記録したものをモニターデータと呼ぶことにします。出勤の記録がモニターデータならば作業者名簿はマスターデータと考えれば良いでしょう。作業者名簿も時折更新する必要がありますが、作業者が加わる、あるいは辞めるというのは不定期でしょうし、多くの会社では数カ月に1度くらいの頻度でしょう。
そこで実務的には、
マスターデータ・・・更新頻度は不定期で多くの場合数カ月に1度
モニターデータ・・・日々或いはもっと短い間隔
と更新頻度に注目して区別するのが簡便です。
このモニターデータに関して、4Mごとにどんなものがあるか見ていきましょう。
4M要素 |
モニタデータ |
Man(人) |
出勤状況、所在位置、担当した製品とその業務 等 |
Machine(機械) |
稼働時のモニタ値、適用した製品、トラブル・メンテナンス内容 等 |
Material(部品) |
製品に使用した部品のロット番号または個体管理番号等 |
Method(手法) |
製品に適用した工程フロー、作業内容、作業手順、設備の使用方法等 |
Manのところに「所在地」とありますが、これはモニターカメラを作業現場に設置して作業者の居場所を時々刻々と記録することで分かるようになります。もちろん、この「所在地」はすべての工場で把握する必要はありません。後で例を紹介しますが、こうしたものを管理する例が出てきている、というぐらいに考えてください。
Machineのところの「トラブル・メンテナンス内容」は例外的にモニターデータとしましょう。トラブルが毎日あったら、たまったものではありませんが、起こるポテンシャルはあるので、枠組みとしてはモニターデータとした方が便利です。定期メンテナンスのデータとなると、3カ月に1回とか半年に1回程度でしょうから、マスターデータとして扱うことも可能ですが、これも例外としてモニターデータとして扱いましょう。
MaterialとMethodのところで「製品に使用した」部品とか工程フローと書きましたが、これは製品の管理単位である製造ロットごとに記録するという意味です。自動車のような個別生産なら車体番号とか個体管理番号ごとに記録することになります。
現実の作業現場ではロット番号や個体管理番号がつけられず、しかも後の工程で順番が入れ替わってしまう、ということも良くあります。こういう場合は「作業日時」を併せて記録しておけば良いでしょう。ロット番号を記録する、といっても、「ロット番号を発番する」、「それをケースに添付する」、「添付されている番号を読み取る」、といった作業が必要です。高温処理する環境などでは「読むこと」自体が簡単なことではありません。この後、製造現場にIoTを適用するお話をすることになりますが、現場にはそれぞれ事情があります。ロット番号を使うか作業日時を使うかといったデータの管理方法一つとっても現場にあったIoTシステムを構築しなければ、ユーザには受け入れてもらえません。