石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

新型コロナの検査について

新型コロナで非常事態宣言が出てしまい、外は晴れているのに屋内にこもっている方が多いと思います。家にいるとテレビをつけてしまい、ご多分に漏れずワイドショーで新型コロナの討論(?)が繰り広げられています。

 

そこでよく議論されているのが、検査が足りない、希望者全員に検査をなぜしない、というものがあります。医療リソースの問題や検査が正確でない以上、偽陽性の人が病院に押し寄せると困る、という意見と、検査なくしてきちんとした防疫ができるのかという意見が堂々巡りしてます。まあ医療リソース増やせとか精度良い検査を開発しようというのが正論なのですが、簡単にはできないでしょね(短時間で精度良い検査法はそろそろリリースされるようですが)。

 

これからもそうした議論があるでしょうが、そういう時に下記の簡単な計算問題を思い出して頂きたいと思います。小中学生でもできます。

 

人口1億人の国で疫病が流行って10万人の感染者が出ました。この疫病を検査すると、感染した人を70%の精度で陽性とし、感染していない人を90%の精度で陰性とします。Aさんはこの検査を受けたところ陽性でした。Aさんが実際に感染している確率を求めなさい。

 

最後の問いのところは、何言ってんだよ、70%だろ、と思われるかもしれません。しかし、「感染した人を70%の精度で陽性」ですから、正解は70%ではありません。

 

では順を追って説明しましょう。

非感染の国民数 1億人-10万人=9,990万人

感染者で陽性と判定される人数 10万人*0.7=7万人

非感染者が陽性と判定される人数 9,990万人*0.1=999万人

陽性と判定される人数 7万+999万人=1006万人

 

Aさんが実際に感染している確率 

感染者が陽性と判定される人数/陽性と判定される人数 

=7万人/1006万人

=0.6958%

 

え、え、えって結果ですよね。直観に反します。にわかには信じられない。

 

これは、いわゆるビックデータ解析などで使われるベイズ統計というものを勉強始めると最初に解く計算問題ですので、あーあの問題ね、っていう方も多いでしょう。もちろん、疫学に携わる方々の間でも常識と聞いています。

直観に反した結果になってしまったのは第一に全国民を対象にしてしまったこと。実際は新型コロナの場合は発熱が4日以上続いたとか濃厚接触があったとか検査の対象を大幅に絞り込んでいます。この絞り方は、各国のリソースや国民性、外国との交流の多さなどで国ごとに決めているのでしょう。不安に思ったので検査をしてください」という人全員に検査をしてしまうと、大変なことになります。誰でも不安ですから。

 

現行の検査数の多寡はともかく、この絞り込み方=検査ポリシーが大事だということは上の計算問題からもお分かりいただけると思います。また国ごとに検査ポリシーが違うにも関わらず、国ごとの感染者の数を一覧表にして、あの国より多い/少ないと議論するのも全く無意味です。

 

ワイドショーもこれくらいのことはベースに議論してくれれば良いのですが、まあ無理ですかね。