石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

ものづくりIoTと4M管理(8) 4Mのマスターデータとモニターデータ

ここでは、マスターデータとモニターデータの関係を少し纏めて述べたいと思います。

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図の緑の部分は自社を示していて、青い部分はお客様です。緑の部分のセンサというのは製造現場に置かれた各種センサーだと思ってください。

 このセンサーで、製造現場で起こっていること、例えば作業者は誰か(作業者番号)、使用している部材は何か(部材コード)、使用している設備の温度とか流れている電流、そして作業している工程名とか検査結果などを収集します。これらがモニターデータです。

 そしてモニターしたデータはマスターデータと照合、確認します。作業している人は、その作業をする資格を持っているか、使用した部材は正しく登録されたものか、設備の処理条件は登録されたものと一致しているか、ものの流し方は顧客と合意したものか、といった確認です。これは常時オンラインでできればそれに越したことはありませんが、多くの場合は事後に点検する形になるでしょう。いずれにせよ、モニターしたことが正しいかどうか確認するための判断基準なり決めごとが管理されていなければ話になりません。この判断基準なり決まり事がマスターデータとなります。

 このマスターデータは、こういう機械や部品といったハード、ものの作り方や作業者の資格といったソフトを含めた現場の姿、構成要素を記述した、いわばデータベースになります。

 こうした現場をモニターする仕組みと、モニターしたことが正しいか判断する基準、決まり事があるからこそ、モニターしたデータに基づいて実績を把握したり、改善点を検討することが出来ます。

 顧客から、「この前納めてもらった製品、少し寸法のばらつきが大きいんだけど製造履歴見せて」、と問い合わせがあったとき、現場でその寸法の検査をしていてそのデータをモニターしていても、作業者が寸法測定の教育を受けていなかったり(測定ミス)、加工設備の設定条件が間違って設定されていたら(加工ミス)、問題です。

 このように、IoT時代になっていくら良いセンサーとネットワークを使ってデータを収集しても、そモニターしている項目に関する決まり事、判断する基準などがしっかり管理されていなければ何も活用ができません。

 だいぶ現場よりの書き方をしましたが、すこし概念的に纏めてみましょう。IoTとは、計算機上に構築したサイバー空間に現実世界でモニターしたデータを与え、処理して現実世界で活用を図るものですが、このサイバー空間で製造現場を正しく構成するためには、現実の人、機械、材料、手段という4M要素を正しく必要な分だけデータ化しなければ、現実世界のモニターデータの処理・活用は望めない、ということです。

 ここで、「正しく必要な分だけ」ということが重要です。特に「必要な分」というのが重要で、大掛かりなソフトウエアの展示会でのデモのような「バーチャルファクトリ」を目指すのか、あるいは加工時の温度をモニターして異常診断をするだけなのか、といった目的によって大きく異なってきます。

 本ブログのこれからの記事はそうしたことを明に暗に意識しながらまとめていきたいと思います。