石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

ものづくりIoTと4M管理(5)

今回は4M管理の変更点の管理について考えてみたいと思います。

ここで改めて明示的に書きますが、管理するものは2つに大別されます。一つは「決めごと」で、もう一つは実際に「決めごと」に従って作ったかどうか記録した「実績」です。変更点の管理の仕方もこの2つで違ってきます。

まず「決めごと」ですが、これはどう決まっているか書類化されているべきものです。顧客と口頭だけのやり取りでは信用されないでしょう。また昔の刀鍛冶のように口伝なり師匠の動きを弟子が見て作り方を覚える、では工業ではないですね。

 中小企業などでは、その書式や纏め方など独自のものがあってよいと思いますが、顧客が一目見て納得できるような形にしておくべきです。また社外に知られたくないノウハウも文書化しておく方がよいでしょう。公開しないから文書化しない、は筋違いです。とはいってもベテランの職人さんに頼っている場合は、その作業方法を逐一文章にするのは無理があります。そうい場合は、出来上がりの品質などに一定の社内基準を設けて、社内教育によりその基準を満たした作業者のみにその作業を任せる、とするのも良いのではないでしょうか。

 いずれにせよ、こういう「決めごと」でつくる、というものを文書化しておくことが重要です。そしてなんらかの事情によって「決めごと」を変更したならば、その書類を変更して、変更日時とバージョンを記録しておくことで変更点管理ができます。

 次に「実績」です。実績は基本的に生産する単位であるロットごとに記録することになります。それを作ったときの作業者(Man)や使用した設備(Machine)、使った部品(Material)、適用した設備の設定値(Method)などです。また生産した日時も、工程毎と完成したタイミングで記録しておくべきです。複数の生産ラインを所有している会社では当然どのラインで生産したかも記録すべきです。

 従来、こうした記録は現場の作業日誌などに手書きで書いていた職場が多いのではないでしょうか。これをパソコンで集計(ここでいうIT化)したり、センサーなどを使って自動で集計(ここでいうIoT化)していくのが最近の流れ、ということになります。

 「実績」ですから、ロットごとに変更されていても不自然ではありません。ですから、「決めごと」のように文書化しその変更履歴を管理するというより、ロットごとのデータを表形式のソフトで管理する方が便利でしょう。良くあるのが、縦方向に製造ロットを並べ、横方向に4Mの項目の実績を並べる形です。こうしておくと社外で問題になったとき、この「実績」に基づいて、何が問題であったのか、そしてその問題となった要因はどのロットに影響を及ぼしているのか、ということを後から調べられるようになります。もちろん、社外の問題だけではなく、社内の生産性向上のためにも活用できます。

 例えば「決めごと」ではA社の部品とB社の部品の両方を使ってよいことになっているけれど。社内の出荷試験ではB社の部品を使ったロットの方が不良率が高い、といったことが分かったならば、「決めごと」を変更してA社の部品だけを使うこととした、といった運用もありえます。

 また最近作業現場の温度やクリーン度などの環境も、ものづくりで重要になる場合があります。そうした場合も「決めごと」を定め、それを守って作っていくことが重要です。温度やクリーン度といった環境項目はロットごとというより、時々刻々と変わる状況をモニタリングしていくことが多いと思います。その為、ロットを生産した日時とこれらの環境因子を測定した日時を見比べて、問題となっているロットを生産したときの温度、クリーン度などが分かるようになっていれば良いでしょう。

 環境に関する項目を「E」として4Mとは明示的に分ける場合もありますが、要は生産に重要な項目ならば忘れず管理することが重要で「E」に分類しても、方法(Method)に分類してもどちらでもよいと思います。

 次から、4Mの内容をそれぞれ詳しく見ていきたいと思います。