石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

事業承継補助金について(4)

今回は事業承継補助金を申請する際に提出が求められる補足説明資料について書いていきます。補足資料と聞くとなんだかオマケで提出しておけば良いのかな、適当でいいだろうと考えてしまうかもしれませんが、それではちょっと申請が通る可能性は低くなります。前回も書きましたが、補助金の原資は税金ですので、きちんと税金使われてますよ、世の中の役に立ってますよ、と補助金を出す人たちが説明できるものでなければなりません。

 では、どうやって書いていくか。書いてほしいポイントが公募要領にも記載されています。今回もH30年度の公募要領をベースに纏めます。

 まず、申請内容が、独創的な技術、アイデア、ノウハウに基づいて新たな価値を生み出すものであること。ものづくりでもサービスでも構いません。ただ、独創的、と言われてしまうとかなりハードルが高いと考えがちですが、何もアメリカのIT企業の設立時の物語のようなことを書く必要は全くありません。今までこういうものづくり、商売をしてきたけれど、事業承継を機に、今までとちょっと違った製品、サービスを生み出してみたい、ということが説明できていれば良いのです。例えば中小のものづくり企業の場合、承継を機に古くなった設備の更新を図りたい、という場合も多いでしょうが、自社にはこういうノウハウや強みがあってそれで先代は長年事業を続けてきた、その財産を引き継いで新しい設備を導入してその設備の新しい機能を活用すれば、新規顧客も期待できるし、売り上げ増も期待できる、といったことで良いのです。単に旧式設備を更新しますといった書き方では、金融機関からお金を借りてやってください、ということになります。

 次に、申請内容の具体性です。何をどういう手順で進めていくのか。また、人員の確保、販売先のパートナーなどが決まっている、或いは目途が血ているのか、という点です。例えば新しい設備を導入します、という時は、その使いこなしはできるのか?経営者本人がそれを使うのか、誰か雇って使ってもらうのか、それならその教育は?、原材料の調達は目途が立っているのか?、販売先のパートナーには試作品提供するのか?、その日程はいつ?、と明確な計画を記載する必要があります。アイデアだけではダメです。

 そして、市場が明確になっていることも説明する必要があります。がんばって営業します、人通りが多い立地なので店を開けば売り上げが見込めます、だけでは明確とは言えないでしょう。先代はこういう顧客を相手にしていたけど、どうも獲得できていない顧客層がある、そのためにはこういう製品、サービスを提供したいという形で纏めれば説得力が増すのではないでしょうか。販売パートナーからのアドバイスや顧客からの声など具体的な内容が良いと思います。そして読み手にこれなら収益が立ちそうだな、と納得してもらえることが重要です。政府の白書や調査会社のレポートなどを引用するのも社会の潮流を説明する上では悪くはないですが、中小企業の顧客を説明するにはちょっとアバウトな感じがします。

 また、計画自体が妥当と思えることが大切です。申請を通そうとして過大な売り上げや収益の計画を記載するのも禁物です。売り上げが倍々ゲームで増加することなど、まず望めません。試作品の提供やら販促会など半年、一年ごとにしっかり手を打って着実に売り上げを伸ばそうとする姿勢が重要です。また、懸念事項をまとめておいて、それに対する対応策、うまくいかなかったときの代替え策を説明するとよいでしょう。

 最後に地域経済への貢献内容を説明すると良いでしょう。原材料の調達先や従業員の雇用の他、地域の特産品などその地域への来訪者(インバウンド含む)やその地域での消費拡大が見込める内容があれば是非記載すべきです。また、ここは広い意味での地域貢献の内容をアピールすれば良く、スポーツチームの応援、地域イベントやお祭りなどで中心的な役割を果たしていることなど、補助金を出すことによって会社だけでなく、地域全体が元気になることが説明できれば良いでしょう。

 これらをA4で10ページ程度で纏めることが求められます。図表や写真を使っても構いません。少々大変ですが、実際に企業を経営している方、承継しようとする方なら、どれも何となく頭の片隅にあるような内容だと思います。補足資料作りの際にそれを纏めて整理する、そういう気持ちで臨むのが良いのではないでしょうか。

 

事業承継補助金について(3) - 石川誠二の診断士日記

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