石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

本年度のものづくり補助金について

 ものづくり・商業・サービス生産性向上補助金、通称ものづくり補助金、更に略してモノ補助の公募が始まっています。

 昨年と比べるといくつか大きな変更がありました。変更点を中心に発表された概要資料と公募要領をもとに少し纏めたいと思います。

 大きな相違は以下です。

(1)おおよそ3カ月おきに公募され、今年度は5回あります。初回締め切りは3月末。各回とも事業期間(公募決定から完成まで)は10カ月と、納期の長い設備、サービスの導入もやりやすくなりました。

(2)小規模事業者が特に優遇されます。例えば製造業では従業員20名以下を小規模事業者としていますが、小規模事業者は補助率2/3(上限1000万円)で、審査の際に加点措置もあるようです。製造業で従業員が20名を超える企業では補助率が1/2です。商業・サービス業では5名がその境になります。

(3)電子申請化されました。下記のGビズIDからGビズIDプライムというアカウントを取得して申請することになります。アカウント取得には約2週間かかりますし、印鑑証明も必要になりますので手続きは早めにしないといけません。去年の2次公募で使用したミラサポのサイトからではありません。

gbiz-id.go.jp

(4)加点項目が変わりました。サポートする側としては実務上はここが一番関心があるところです

(4-1)成長性加点

経営革新計画の承認(申請中も可)が必要になりました。昨年までは先端設備導入計画の提出でよかったのですが、本年度は経営革新計画のみになりました。先端設備導入計画に比べると、作成、承認まで手間がかかります。その分、将来をしっかり見据えた経営者にとっては、「あわよくば補助金を」といったような企業が加点措置を取りにくくなるため、すっきりするかもしれません。

(4-2)政策加点

先に述べた小規模事業者に加えて、創業・第2創業を行ってから5年以内の事業者に加点されます。第2創業とは新しい経営者を迎え、新規事業への進出や業態転換を行うことです。また概要には記されていませんが、公募要項にはバイオマス素材などを用いた環境に配慮型の事業計画に対して加点があると記載されています。例えば7月からのレジ袋有料化の流れに沿ったビジネスプランが対象になると思われます。

(4-3)災害加点

昨年の2次公募から始まった事業継続力強化計画の提出(申請中も可)に加えて、「新型コロナウイルスの影響を受けて、 サプライチェーンの毀損等に対応するため の設備投資等に取り組む事業と昨年秋の台風で被災した事業者には加点措置があrます。新型コロナ対応に関しては、中国等で生産されていた部品が届かないため国内で生産することにした、等の状況を想定しています。

(4-4)賃上げ加点

「事業計画期間において、給与⽀給総額を年 率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃 ⾦を地域別最低賃⾦+60円以上の⽔準にする計画 を有し、従業員に表明している事業者または「事業計画期間において、給与⽀給総額を年率平均 3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃⾦を地 域別最低賃⾦+90円以上の⽔準にする計画を有し、 従業員に表明している事業者」などが加点対象になります。今年度から地域別最低賃金に関して言及する必要があります。また実務的には、フリーフォーマットだったものが、今年度から書式が明示されました。

(5)補助金を受けたことがある事業者に対する減点

過去3年以内に類似の補助金を受けた事業者には減点措置が取られます。広く補助金のメリットが享受できるようにという措置です。公募要領を見ると「交付決定の回数に応じて」減点する、とあります。減点の点数は公開されていません。これは推測ですが、過去1回の補助金交付なら、しっかりした事業計画を立案さえすれば、門前払いになるような減点ではないのでは、と思っています。

 

初回の3月締め切りは、新型コロナ対策等で急ぐ方を特に配慮して日程を決めているようです。また本年度から3年分の予算を確保して、従来とは異なり年度またぎで補助事業が遂行できるようになっています。これも私の推測ですが、新型コロナによる昨今の景気先行きに対する不安、実需落ち込みに対する刺激策の一環としてモノ補助も前倒しで予算を使っていくのではないかと思っています。三年均等で、などと言っている状況じゃないですよね。かといって、経営者の方がたは先の見えない状況で設備投資には二の足を踏んでしまいます。私たちも、そうした経営者の方々をうまくサポートできたらと思っています。