石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

ものづくりIoTと4M管理(13) サイバーフィジカルシステムと4M管理

今回はIoTシステムを導入する際、それに関わる生産の4Mに関わるデータの登録のワークフローに関して、その重要性を説明したいと思います。

 

IoTに関する展示会に行ったり、Webサイトを見に行くとサイバーフィジカルシステムという言葉によく出会います。これは現実の世界(フィジカル)をモニタリングして、その結果を計算機の世界(サイバー)で処理して、現実の世界にフィードバックして活用する、ということです。

 ものづくりIoTではフィジカルな世界は工場になります。そしてサイバーな世界は、工場を計算機の中で模擬した世界ということになるのでしょう。もちろん、サイバーな世界は現実の工場を鏡のように全部映した世界ではなく、前回、ものづくりIoTと4M管理(12)で述べたように、大部分の場合は温度をモニタリングして制御しようというような小さな世界です。

 しかし、いくら小さな世界であろうともサイバーの中の世界はフィジカルの世界と食い違っていてはいけません。

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サイバーの世界でフィジカルの世界を記述しようとしたら、それに使用するデータに誤りがあっては行けませんし、もちろん入力する段で誤りがあってもいけません。

 ここで現実の工場を記述するデータというものは製造に用いる機械の仕様、部品、良品不良品を判定する規格値等4Mデータそのものです。

 そしてサイバーの世界への入力はフィジカル世界の4Mデータを忠実にコピーしていなければなりません。

 さもないといくら精密なアルゴリズムで現実世界にフィードバックをかけようとしてもうまくいきません。

 現実の工場では、4Mの項目を作業手順書に記載して発行するなり、いろいろな台帳に記載する場合は、責任者と情報の発信元が決まって発行までのワークフローが定めらられています。

 

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IoTのシステムが完成した後、例えば新しい品種に対しては検査の規格値が異なるから変更します、という場合、検査の手順書はこれまで通り新たに発行します。しかし、システムの方の入力担当は誰?となりかねません。簡単に入力できるインターフェイスを作っておかないとそんなのシステム導入した人じゃないと操作できないよ、となってユーザーがそっぽ向きかねません。

 また手順書などは、照査、承認と2重、3重のチェックがかかりますが、パソコン入力した4Mデータの入力ミスはチェックする仕組みがあるでしょうか?つまらない入力ミスでも、上で説明したサイバーの世界はフィジカルの世界と別物になります。

 

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 その意味では、上の図で示すように規格値なら設計者が決めた段階から、マスターデータとして登録されるまでワークフローを確立して、今まで通り組織として入力値が正しいことを保証できるような仕組みが必要だと考えます。

 できれば設計者が入力したが画面を関係者で照査、承認しデータベース化する、それに基づいて手順書など必要な図面を自動生成する、といった形が望ましいとおもいます。

 ただ、それはまたシステムが大きくなり導入費用も発生します。そこは現実的な運用とシステム構成が必要でしょう。

 いずれにしてもIoTのシステムを導入したら、前回も説明しましたが、この4Mのマスターデータ登録のワークフローが正しく回ることを確認する必要があります。

 

 ソフトベンダーさんは、ユーザーの中のそうした4Mのデータ登録作業はしっかりやってくださいね、で終わってしまいます。それはソフトベンダーが悪いのではなく、ユーザーとなった導入企業の業務そのものだからです。