石川誠二の診断士日記

中小企業診断士の雑記帳です

読書日記(3) 売上を、減らそう

佰食屋の中村朱美さんの本です。

 

ガイアの夜明けなどで紹介されていますので、ご存知の方も多いでしょう。

牛肉のステーキ丼などを中心にしたメニューを1日100食限定で売り切ることにこだわり、実際に昼過ぎには売り切ってしまうので従業員は残業せず定時で帰れる。そこで生まれた心のゆとりがお客様への細やかなサービスにつながるし、従業員も働き甲斐を感じているようです。

100食が近づくと心の中でカウントダウンが始まり、あと何食と自然と仕事に熱が入るとか、言われてみればそうなんですが、なかなか経営者として発想しないのではないでしょうか。

ともかく中村さんがこだわっていらっしゃるのが従業員の満足度。従業員満足度:ES(Employee Satisufacution)という言葉は、顧客満足度:CS(Customor Satisfaction)という言葉に比べて市民権を得ていないようですし、ESを向上させてもCSにつながらない、とか売り上げ向上につながらない、という話も良く耳にします。

私も正直そう思っていたところがあるのですが、この本で目からウロコが落ちました。

今までESと思っていたことは本当に従業員が求めていたことなのだろうか、福利厚生の充実や時間単価を少しあげることがESなのだろうかと。

中村さんは従業員の自己決定権を重視していらっしゃいます。特に働く時間帯。自分はこういう事情を抱えているからこう働きたい、そういう思いを持つ従業員をいかに組み合わせて働いてもらうか、それが経営者の仕事と割り切っておられるようです。

百貨店のレストランが働いていた方が、年収は大差ないのに帰る時間が5時間も早くなった、という話を読むと、そりゃ喜々として集中して働けるよなと納得します。

もちろん、評判の高いステーキ丼という強い商品があってこその成功でしょうし、創業当初は相当のご苦労もあったようです。また中村さんご自身が今や広告塔になっているので宣伝広告に費用が掛からない、といった点も見逃せないのかもしれません。

そういう意味で全ての人が真似できるわけではないのでしょう。しかし昨今、無理な売り上げ目標や顧客との約束を達成しようとして従業員や役員が不祥事を起こすといったニュースが時々ありますが、そういうニュースを思いだしながら今一度ESに関して考え直そうと思った本です。

 

おやっと思った言葉

そもそも就業時間内に利益を出せない商品とか企画ってダメじゃないですか